慟哭/もっぷ
きみが写真のなかで笑う
だけの日日になって
きょうも散歩道には
影法師が一つ
靴音も一人分
でも炊飯器は相変わらず一回に
四合を炊いているよ
楽をしたくって
バックグラウンドノイズ
を
ヒトの、
ぬくもりにはもう
求められない
白日にも
カーテンを閉じたあとにも
電池を取り換えてはもらえない
時計に
なったような気分のまま
で
カレンダーが
めくられて
ゆくのを
とても不思議な心地で
傍観している
慟哭したいんだよ!
実行犯にならないのはここが
ちいさな集合住宅だからじゃなくて
きみが
いないから
だ
抱きしめられない慟哭ほど
かなしいものはない、だろう
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