追慕とサルベージ/村正
 
いたんだ

祖母の家が流されていた間

テレビを蹴り飛ばしただけ

俺にはメシも布団もあった

善い人になりたかった





大抵はいつも胸を張れなかった

褒め言葉は疑った

蔑みは真に受けた

君の言葉だけは反芻した

たこができた頃には

左胸にすとんとおちていった

君との距離に

遠近感がなかった





感情が環状になっても

無駄になることはない

許し始めた頃から

爛れた体で進め





体温だけが確かだった

朝を迎えた日々は

なんだか恥ずかしくて

同じくらい
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