追慕とサルベージ/村正
いたんだ
祖母の家が流されていた間
テレビを蹴り飛ばしただけ
俺にはメシも布団もあった
善い人になりたかった
*
大抵はいつも胸を張れなかった
褒め言葉は疑った
蔑みは真に受けた
君の言葉だけは反芻した
たこができた頃には
左胸にすとんとおちていった
君との距離に
遠近感がなかった
*
感情が環状になっても
無駄になることはない
許し始めた頃から
爛れた体で進め
*
体温だけが確かだった
朝を迎えた日々は
なんだか恥ずかしくて
同じくらい
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