幸せは眠っている/砂木
 
家に帰るまで離れなかったらしい
バイクに乗って出かけた所も 面倒をみて貰った所も
朝食の生卵や おふとんをひいてもらったのも覚えているのに
待ち焦がれたのではないかと思える 迎えに来て貰った記憶がない
長い間 とても不思議だったが 最近 はっと気づいた
私は きっと父の腕の中ですぐ眠ったのだ
幸せに眠っているのだ 悲しい事もすべて すべて眠っている

幸せに眠る私の中の私
眠り続ければいい 幸せは眠っている
眠れぬ日々は 眠る私の幸せを守るために

あれほど変えたくなかった名前を変え嫁いで
独り立ちして二十年もたつのに いまさらなのに

風よ土よ空よ木よ
私を私は私に返します
見届けておくれ きっと

眠るぬくもりを守るため
眠れぬ日々がある
眠りに晒されてさらわれても
幸せは眠っている
なにものにも 変えられない







 
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