ストリートミュージシャン/三田九郎
 
足を止める人もなく
振り返る人もなく
木枯らしが吹き
彼は消えた
いいことがあった日
なかった日
落ち込んだ日
浮かれた日
いつもの時間
いつもの場所
なんの関わりもなく
いてもいなくても
よかったはずの
彼が消えた
次の日も
その次の日も
彼は不在で
その日以来
彼の不在が
そこを通る
そのときにだけ
のしかかり
僕の暮らしが
いっとき止まる
関わりを持たない
幾人もの人々が
彼の不在と
彼の現在に
僕と同じに
暮らしをいっとき
止めるのだろう
風雪に
人々の記憶が
僕が
失われるときまで
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