ホッチキスでとめただけの簡単な詩集、でもそれを君は本と呼んで/木屋 亞万
 

ホッチキスでとめただけの簡単な詩集、でもそれを君は本と呼んで、束ねられた数枚の紙でしかないそれを僕に差し出すと、君は下を向いてコップについた水滴を指で撫ぜた。
何気なく開いたページには、立てこもりの犯人風に引きこもりについて書いた詩が載っていて、ニートが「ピザを寄こせ」と要求し、母親が泣きながら説得した結果、最後は近親相姦するというものだった。
君は恥ずかしそうに「どう」と聞いたが、むしろ君がどういう状況でこの詩を思いついて、どんな顔でこの詩を書いていたのかの方が気になった。
次のページには、ウニの精巣を食べすぎて卵巣がウニウイルスに感染し、トゲトゲの受精卵をピルで排卵する話が乗っていた
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