∫ポルターガイストd幽霊/
 
の分だと三時間はかかる」と呪術師の声がした。呪術師の色は、よくわからない、イヌイットという文字だけから想像されるような、不確定な毛皮で、おれは頷くわけでもなくて、たださっきよりも強く口の中のものを噛んだ。(たばこがすべて護摩壇にくべられてしまった)やがて行き詰ったのか、少しばかり出て行ってくれと声がしたから、廊下に出て、並んだ死骸の数を数えていくことにした。数えながら、おれはライターを付けたり消したりを繰り返していた。その度にざわめきは止んで、怒号や、悲鳴が、遠くなる。(おれはいつの間にか制服を着ていた。詰襟で、校章はきっと誰かに剥がされてしまって、みっともない抜糸痕で構成された長方形が、それを示唆している。あいつらが作った標本を盗み出したのはおれだった。そのために、おれは校章を剥がされてしまった。誰でもない、おれ自身によって剥がされたのだ。)オイルが切れたので、足元の死骸に供えるようにライターを置いた。それを拍子にしたように、呪術師の声が止まった。おれは、ポケットに手を入れて、屋上に行くことにした。ざらざらした感触で思わずポケットから手を出すと、吸殻の灰が手にこびりついている。
戻る   Point(1)