秋を見つめてみませんか 三篇 (想起させるものに、忠実に)/乾 加津也
後に纏わるやはらかな宇宙の襞を意識しながら)
「よほどわたしの熱情の深さは、」
といふ怪盗。
そして外灯掃除の
じぶんの務めを怠って珈琲など沸かして
「やはりわたしの出方次第によっては、」
といふ暢気者。
いったいに秋といふ奴は!
落ち葉となって
流れるように落ちてきましたわたしのために少しそこを空けてくれませんか。
雨でもないのに降っている山峡の息吹にさらしたようなベエジュ。
吹きあげる秋にわざとしがみついてみたあなたがこんなにも冷たい表情(かお)でいたとは。
時間(とき)はすでに終わってしまったようですこれからはなんと呼べばいいのだろう。
もういちどみてみたいさわってみたい感じてみたい落日の焼けたかなしみ。
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