洗濯物は乾かない/梅昆布茶
 

何かを描くことはスーパーコンピューターの3D能力でも
間に合わないんじゃないかと思うんだ

僕のようにいつも洗濯物を部屋干ししてすましてしまう人間には
気づかない優しい季節の風があるっていうこと

それの色や匂いや季節の野菜の歯ざわりの音やら手触りを
うまく生活の中で誰かに伝えてゆけたら良いかなって思う

たまたま仕事が空いてしまって明日は休みなんだ

給料日前でチューニングの狂ったギターを修理に出すお金も無いのだけれど

それでも誰かにメールを受け取って眉をひそめてもらったり
おいしいインスタントコーヒーを淹れてミルクとのバランスを考えたり
ナウマン象の愉快な曲芸の夢をみることだってできると思うんだ

にんげんの赤と緑と青の感知能力の混乱が
色覚異常になってしまうのかもしれないがそれでも怯えないで
色を見分けてゆきたいと思っているんだ

朝飯を作る間に洗濯機をまわして
自分も世界もぐるぐる廻って

つい値段で買ってしまった白菜の白さに
ざくりと包丁を入れて
一日をはじめようと思うんだ







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