月と哭け (三)/アラガイs
 

ドアを開けると芥子の実が弾けて
ちぎれた海藻が過去を誘き寄せながら
細く尖った肩や腰骨に絡みつく黄土色の髪
紫の影が月の表面を犯す
瞳は補色と死海をさまよい妖しい。
噛んでとばかりに潤んでいた
上着を脱ぐときの息には魔物を吹きかけてやる
おんなは深々とソファーに腰を沈めると、両膝を大きく上に開いて自慰をはじめた
まるで餌を貪る虎が圧し殺す喉笛
微かな響きで赤い指先が口を濡らす
(わたしの淫膿に這うよ
…唾液は生き物を移すから)でも
片時も目のない人形を手放せない子供たち
(ねえ… お願い
そのまま… )背中を丸めベッドに腕をつくおんな
たまらず下着
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