耳鳴り/Ohatu
 
 耳鳴りがする、ずっと遠い。
 静かになったと思い、見渡すと、島国は無くなっていた。
 鳥がやっと一羽、乗ることができるくらいの岩礁が、
 まだゆっくりとした白煙を上げている。
 忘れないで、忘れないで、忘れないで。
 美化された記憶の中で、あなたは自嘲し、あたしは落っこちる。
 あなたはテレビのように饒舌では無いけれど、温かかった。
 あたしはバカだったけど、泣いてばかりだったけど、逃げなかった。
 他はもういい。それだけ。透き通る海の中で。
 残って、残って、残って。
 遠くで、深呼吸の音。切り替わる鼓動。
 また、一人気付いて。またひとつ始まった。
 ずっと遠くが、途方もなく迫ってくる。
 もう、言い訳はできない。
 すべてが、あたしを、剥ぎ取り、裁いてゆく。
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