月と哭け (二)/アラガイs
中庭を突っ切れば垂れながしの異臭が鼻を注さしてくる 。
両脇に並んだ板戸を次々と開けどれもこれも汚物にちり紙の山だらけはとても直視できない 。
どこで用を足せばいいのか少ない紙を手に迷っていた 。
いっそのこと中庭の柘植に隠れてひねり出してやろうか
それとも便所の裏手に周りこみ、石垣の縁に立つ金木犀の枝下へとしゃがみこんでは尻をつき動かしながら…
とにかく汚物の中で鼻をつまりながら用を足すことだけは我慢できなかった 。
(いいじゃないか 。済ませたら 。
どうせこれも夢物語なんだ 。 昔は皆がどこでもよくしたんもんだろ)。
便でぱんぱんに張ったお腹をさすりな
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