鳥獣戯画/梅昆布茶
 
月は夜の命醒めた情熱が空に浮かんでいる

張り出した枝の先に引っかかってなにを思う

そらが墜ちてくるまであそぼうか

朝のひかりを待たずに逝ってしまう
幾千のしじまの響きをたずさえて

青い河原にはススキの薄化粧
女郎花なども黄色く想いを咲かせて

もしも鳥になれたなら
たくさんの種子をついばんで唄うだろう

いつか猫になれたら
走ることに特化された前足の
指の数をかぞえて嘆くだろう

兎になったなら耳をぴんとたてて
世界の音をききわけてみたい

蛇だったなら滑らかな体で
地の果てまで這いすべってゆくのに

ぼくは言語を獲得した猿にすぎない

道具をつくり空間や時間を夢想し
エントロピーにあらがって存在する
脊椎動物のなれの果てなのだ

さあもっと美しい音楽を聞かせて欲しい

とても素敵な石器を作ってきみのために

たくさんの獲物をかついでくるんだもの





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