雨が降ってくるとき/itaintme83
う
やがて僕は遺書を書くのを止め、今を生きることにした
そうして僕の世界は水没していく
すれ違う人たちはみんな傘を持っているが、僕には必要ない
怒りを燃やせばそれはたちどころに乾きひび割れていくだろうから
ひび割れたこの背中に雨は染み込んでいく
誰もが何かを燃やしているが、それらは閲覧されることのない図書館の本に似ている
濡れそぼった雑誌がふやけていくように僕の心も溶けていく
「みんな溶けてしまえばいいのに」
そんなことを考えながら僕は通りを睨んでいる
あのジーン・ケリーのように歌えたら
あのジーン・ケリーのように踊れたら
僕の世界はきっとカラフルになるのに
何て素敵な世界 そうでしょうルイ・アームストロング?
僕がうそぶいてるっていうんならきっとあんたはモノクローム
僕は通りに浮かんでいるだけ
耳鳴りが止まない 夕立が止まない 誰も気に病まない
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