曖昧さをかかえて/かんな
いね
理由はひとつしかない
抱かれなど
したらそれこそきみの特別からは消えてしまうからだ―とくべつ
テーブルの上で湧いたお湯を
カップに注ぎ真夜中のコーヒーを飲むといつもより苦いようだ
一昨日だったか
友だちからかかってきた電話の一言を思い出した
似てるね。
そう似ていて
似ていて
どこか絶望的に違うから離れることもとくべつ離れないこともできない
ひざの上で目を覚ました猫いや虎がいた
ぼろぼろの部屋で
ぼろぼろのベッドの上で
ぼろぼろのセックスをしたなら
きみと恋人になんかなれやしない
―すてきな部屋で
すてきなベッドの上で
すてきなセックスをした
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