色彩/もっぷ
 
向こう側も金色だった
そしてこちら側も金色
幼女の背丈ではそれだけが
世界の全てだった
何者にも育てられず

彼女を育んだのは
その、原風景だった
こころの存在を教えられ
歩むことを教えられた

やがて訪れるいく度もの終焉のことも

野の花の恵みが不思議だった
必ず、
そこではシロツメクサが右
レンゲソウが左であり
その逆はなかった

夕映えの美しさは筆舌に尽くせないほどで
茜音の寧らかに燃える光景を立ち止まらずに過ぎることは
不可能だった

…金色を知り
右が真っ白いシロツメクサ
左にレンゲソウ、愛らしいピンク色の、
見あげればいつしかそこは燃える、太陽の遺しもの

彩り豊かなその日々は
多感を、より多感にして
少女を育んだ

(ここでわたしは色を司る神に少なからず感謝をしたい

産声から経って
瞳が金色を認識し
けれど以前、
のことは
不明のままに

金色の風のなか
花々に愛されて
空の茜音にまもられて

少女は
育っていった

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