古い電話/アラガイs
 

よほど不在が気になるらしい。
忘れたころには必ず電話がかかってくる 。
それもきまって夕食を済ませた後か、食事の最中にである 。
べつに何かあるわけでもなく、何も無いのがわかっているから**会話は身のまわりの健康や昔のことだけに終始してしまう。
最近は何かと用事を付けてはすぐに受話器を戻すようになった。
それでも三ヶ月に一度くらいはきちんとかかってくるのだ 。
たまにめんどくさくなると明るく弾むような勢いで応対を変えてみる。
すると声は急に重苦しく暗くなる。
反対に、ひとつ暗い話しでも持ち出そうものなら、声は井戸の底からよみがえったような力強さで活気を取り戻す。
まるで余
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