うなぎ電車/天野茂典
 
   駅は谷になっていて
   陽射しが差し込まないで寒い
   何を考えるのでもなく
   電車を待っている
   やがて電車はうなぎになってあらわれる
   だれも驚くやつはいない
   電車の中では本がよめない
   電車の中ではトイレにゆけない
   でも二区間だからなんとかなる
   うなぎ電車は流線型だから
   早いのだ
   沿線の小駅を
   つぶてのように
   通過してゆく
   うなぎ電車は特注ものだ
   きょうも特注ものの
   うなぎ電車に乗って
   通所してくる
   うなぎ電車に車輪はない
   むしろリニア・モーターカーのように
   浮きながら飛ぶのだ
   したがって多量の水の供給が必要である
   地震が来れば事前に察知して
   ストップするのも特徴だ
   次世代交通手段であることも確かだ
   うなぎ電車よ
   さあ ぼくもお出かけだ
 
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