の果てに/もっぷ
 
良かった恋なんてひとつもなかった
流行歌は嘘つきだ
恋を嫌いになるために
わたしはいままで恋をしてきた

会いたいひとがいない過去しか
持っていないことの貧しさは
愛を知らないままに置き去りの
箱に入った猫とおんなじ

ある、奈良の公園でわたし
みたんです真夏の茹だるなかで
箱のなかのそのいのちたちは
まだ

生きていたんです

どろどろに溶けて
どろどろの地獄で
それでも声帯だけはのこされ
必死で

生きたいよ…



良かった恋を懐きたかった
恋の思い出ほしかった
ときどきそっとうつむいて
いまも好き、って言ってみたい

会いたいひとがほしかった
それがいま目の前にいる
あなたなんですとうそぶいて

行きずりの愛をささやきたい
行きずりの思いにまかせたい

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