【批評祭参加作品】■シロン、の欠けラ(1)/川村 透
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もう一人の、「自分と重なった午後の彼」に、胸倉を掴まれて問いただされる。水のような尋問の一滴一滴を噛み締めながら、午後三時。オフィスの中に風の気配がある。真昼のざらざらとした「暗愁」とともに在る。静止画に切り取られた、一輪の虎のように「酸素のいちばん深いところ」で、息をひそめて、じっと、うずくまっているのだ、たった5分前に「延髄を打ちぬかれ」て、緑色の血潮がこんこんとあふれて来る。少しずつ少しずつ身体をとりもどさなくてはならない。「風は吹いているか?」
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