夜ドライブ/小池房枝
 
く範囲で手頃なのがなくなってきて
探る手も掘る手も疲れてきて
それでも

遠くを終電車が通れば
でんしゃー
飛行機が飛べば
ひこーきー
対岸のウシガエルは平気で鳴き続け
うーしーがーえーるー

ぼしゃらーん

それでも相方は緘黙症を止めない
それでも月夜にただつきあって
そこにだけはいてくれる
星が動くのがわかる時間ほどいてくれる
いてくれることしかしない

川の音
月明かり
虫の声
おんなじ

どぼーん

引き起こしてもらって
また運転してもらって部屋へ帰った
やっぱりずっと
何も話さなかった
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