ブレーキ!ブレーキ!/Seia
 

山の間をするすると
縫うように走る

時にはトンネルに包まれたり
谷に沈む夕陽に照らされたり
湖のふちを綱渡りしたりしている


一人旅なのが 少しさみしいけれど


いつの間にか
夜の帳が落ちて
列車はゆらゆらと
闇を切りながら走る

時には月の光を浴びたり
窓の外に鏡写しの車両が
いつまでも並走したりしている


夕飯の事すら すっかり忘れていたよ


急に外からブレーキ音が聞こえて
窓の外を見てみると
いつもの駐車場で

黄色のビートルが
猫を引きそうになっていた
戻る   Point(3)