草が熱い夏/木の若芽
 
「草が熱い夏」
             木の若芽

葉を摘むと
草は傷つくが
いっそう枝は伸びられるようになる
自らもともとの健康に復するいのちが
草にははっきりとある
葉を摘むわたしの
乱れた心は穏やかになり
淋しさを草と分け合い
その葉を摘んで食べれば
心やさしくなるのだ

木の皮をけずると
木は傷つくが
なぐさめるようにけずっていくと
なぐさめの白い木の身があらわれ
けずり傷つけているわたしの心の傷をなぐさめていく

草が熱い夏
しかし緑はうだっていない
草が燃える夏
しかし緑は焼かれていない
木は夏も涼しく安らかだ
夏の草に埋れて働いた体は
夏の木の陰で休めよう
うつらうつら本を読むのも
こっくりこっくり雲を眺めるのも

行く末を風のまにまに

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