沈められた瞳/atsuchan69
 
大な機械の残骸や
摩り減ったゴムタイヤだの
流された家屋だの
小さくか細い白い腕だの、
数々の見てはいけないリアルが
まるで猫を被ったような大人しい海の波に洗われていた

あの日、閃光を見たのは幻だったのか? 

激しいことばが血だるまになって走ってゆき、
封じ込められていた魔物が
鎖を外された狂犬のように逃げてゆき、
大勢の人が泣き叫びながら、
生きたまま首を刎ねられて殺されてゆき、
人々が安全に暮らす街が、
たちまち忘れられた街と化して

今も呪われた、
微量の悲しみが積み重なっては、
茜色に染まった空を
姿かたちのない声たちが
やがて風のように過ぎてゆく

暴れる、
あの日を、
暴れる、
ことばを、

深い眠りに、
むりやり沈めて





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