忘れたいのに思い出せない/フミタケ
 

何もかえられないまま
誰にも必要とされないまま
という壊音をその瞳に映す秘密を見たよ/僕が
きみの耳を大きくこじ開けたとき

街の風景が
人間の在る風景が
美しくありますように
無機で覆われるつまらない風景が
すぐにも生まれ変わりますように
絶滅したはずの/はじめからなかった風景が
あの子を守ってくれますように
混沌としたこの原始時代をたとえ生き延びられないとしても
腐ったバナナに新鮮なチョコレートを薄くまぶしたようなこぎれいな風景のなかでも
きみがキラキラとしたよろこびをなくさないでいれますように
笑顔がきみのものでありますように
「助けにいきたいけれど
どうせ洪水がやってきて
みんな迷子になってしまうの」
彼女は確かにそうささやいたんだ
なんてすてきな夢だろう
すてきな夢だったよ
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