雨とヨーグルト/Akari Chika
 

それが滑り落ちるのを
瞬間
瞬間
追いかけた
首筋から
服に忍び込むのを
ただ
熱い胸に手を当てて
それでも気づかぬふりで

スプーンに映る照明が
なまぬるい空気を焦がしても
わたしは泣いていないから
ジャムのふたを閉めて

ひかりを
光らせるのは
わたしの目じゃなくて
あなたがふと呟いた
さみしそうな心のモノローグ

ただ触れ合う目先の
色に際限を見出せなくても
ひとつひとつ曇った色を
晴らしていけたら
あなたの手元にわたしがいられるように

ただ
ただ
涙が形を変えて
わたしの胸に響き渡るまで
雨の住処を探さないで。

そうだ もう少しこぼれたら
泳ぎ疲れた魚を癒すように
思い出に溺れる
仮面をはずして
ひかりが届かないこと
言い訳にしないで

この最後を口にしたら
あなたをただゆっくりと
忘れながら愛していく

ただ息を潜めて
もう二度と
呟かずにいられたら
その名前が
雨に消えてしまったら

ただ泣いてしまうのは

あなたがいつも
やさしかったから




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