時の砂/そらの珊瑚
忘れていたわ
時の砂は音も無く
ふりつむ透明な悪魔だってこと
どこへいようと
逃れることはできない
生の終着駅が死であることから
逃れることはできない
気づかぬうちに
若葉は枯葉となり
葉脈に
かつてとうとうと流れていた
水路の思い出を刻むだけ
時の砂は
今この瞬間も
鏡の中に無邪気に舞い降りて
うかつに
それをのぞき込んだ私を
あっという間に
老婆に変える
忘れていたわ
旅をしていたことを
ゆらゆらと
蜃気楼に浮かぶ楽園へ
たどりつくことは
永遠にないということを
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