小さな森/そらの珊瑚
いぶ乾いていた
帰り道はこっちだぞ、と僕の手を引く
知ってるよ
だってパンくずを撒いておいたから
食べてる、食べてる
あの青い鳥はルリビタキだな
ふかふかの路でたたらを踏む
それからおじいちゃんは病気になったけれど
病院なんか行くもんか
あんなところへ行ったら
本当の病人になっちまうと言い
住み慣れた家で最期の日を迎えた
僕のお父さんは
おじいちゃんのことを
いつもは頑固ジジイと呼ぶのに
その日は
オヤジ……と言って泣いていた
僕の身体の水分が眼から滲み出して
おじいちゃんの顔を濡らしたけれど
もう生木には戻らなかった
おじいちゃんは
この家で薪になって
パチパチと燃えた
ほんのささやかな
白い煙になって
小さな森に還っていった
六月の風を道案内にして
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