お猿の森で/salco
 
世界には
シェルターも養護施設もないからなのだろう

ところが人間は
侘しい親がまず異性を求めて徘徊し
色に狂うや牙を仔に向ける
仔とは我が子か相手の連れ子であって
どちらになるかは
夜な夜なまぐわう男女の力関係で決まる
雄が示威的であれば雌は従犯となり
子の現状を憂い将来を慮って手を切る代り
手管に歓びケラクに痴れ機嫌を窺い
手塩に掛けた吾子が手に掛けられる悲鳴に耳を塞ぎ
酸鼻に蓋をし断末魔に目を覆い
晴れて枷を解かれた己が身の
つつがない新生活でも夢見るのだろう
そして警察の追及には先ず
犯行動機と殺害状況をそっくり省いた供述で
新しいオスを庇護しつつ保身にこれ努めるのだ
例えば
「四月五日の朝、起きたら台所で娘は死んでいた」
などと。
人間という霊長類もなかなかの畜生道である
戻る   Point(5)