流浪に添える待合室/komasen333
 
 
そう物語っていた

 こめかみに 
 積り積もった憂鬱を突きつけて
 「もう・・・」 
 なんとなく予感していた切り出し
 制しようと なりふり構わず 
 押さえ込んでいたつもりは
 なかったけれど
 あなたの前で 見せたことのない 
 私らしさが暴れ始める

物語を失くした国を出てゆく
何に焦るわけでもなく 逃避行のように
巡り出す場面は 冗談にもほどがある
あの北欧映画の 
ラストシークエンスによく似ていて

季節を失くした国を出て久しく
知らない言葉 慣れない文化 
馴染めない温度
都市を跨ぐごとに 歳を重ねるごとに 
重みを増していく孤独

凍えるような白銀が 窓に広がっている
何年目かもわからない 
何回目かもわからない 
運転開始を待ちわびる 夜明け前

疎らに座る 
様々な年代 様々な顔つき
その中心で 
静かに燃え上がる暖炉
ぼんやりと眺めながら
一番美しかった頃の その横顔を 
浮かべている 
いつまでも 浮かべてしまっている
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