「詩は、酔っ払って落水しても溺れる心配のない便利な海だ」と言いたいだけの詩/風呂奴
れたあとの船上で詠まれた詩も、安全な陸地に築かれたさまざまな一室で詠まれた海も、活字に幽閉されたまんま、酔って唄う夜に着地するだけ。
酒気を帯びた月明かりは、いつまで経っても無臭なので、通り過ぎる詩人の眼差しを、すべて夜風の音に誘導してゆく。
僕らは口ずさみ易く、なじみ深いメロディの開発と、新しい星座の住処をでっちあげることだけに退屈を捧げようとした。女を連れて歩く高揚感だとか、裸になって踊り狂う芸当が、この街のどこにも見当たらないから、砂浜と波音を捏造して、調子の狂ったギターで誤摩化しながら録音する、その有り様を「若さ」で片付ける。「青春」、でもなんでもよくなった。
酔いどれ船は、眠気に座礁する。
朝日はすでに、昼だ。
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