崩れかけた意志/番田
間だと思う。もう戻ることのない思い出の風景がやってきては、またたくまに遠のいていった。何もそこにとどまることなどないのだ。多くは、時の流れの向こうに流れ出ていく。
いつものように僕は一人だった。周りは英語で話をしていたが、全く何のことをしゃべっているのかすら日本人の僕には何も聞き取れなかった。そんな風にいつものパブで酒を飲んでいた。今は、部屋の床の上にぼんやりと座り込んでいる。恋人との色々な風景がテレビ画面の前のように通り過ぎていった。今はネットの時代だから、デザインや美術自体にできることはもう、限られているのだと思う。仮想空間の中においては芸術に可能性は無いのかもしれない。いや、芸術だけではなく、日常生活全般においてもそういったことはいえるのかもしれなかった。
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