伊藤氏の幻想/mizunomadoka
で」
「ん?」
「来週まで雨は降らないそうだ」
「ああ」
「…………」
「水、飲むかい?」
「いただこう」
私は自慢の水筒を取り出して
黒いスーツに差し出してやった
けどあれは透過するんだな
影だから
「…………」
「…………」
「すまないが、フタを開けてもらえないか」
「ああ、すまん」
「それで影の方を私に注いでくれ」
「こうか?」
「違う違う違う、着地点を合わせるんだ」
私が水の角度を変えると
奴はゴクゴクと美味そうに喉を鳴らした
善いことをしたなと思ってね
空を見上げると
カラスが太陽を横切った
「シット!」
黒いスーツが慌ててブリ
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