【 桜アルバム 】/泡沫恋歌

多くの季節を生きて
わたしは幾度も春を迎えてきた
そして 毎年
いろんな桜と出会っている
真新しい制服に身を包み
新たな出会いに心躍らせて
踏みしめるように校庭を歩けば
薄桃色の花びらが
ひらひらと肩に舞い落ちてくる
たぶん初めての恋だった
恋人と呼べる その人と手を繋いで
一緒に見上げた 夜桜は
月に照らされて 白く光っていた
まるで夢見るような桜の樹だった
あなたを亡くした春
近所の公園に咲いた 満開の桜に
足を止め 独り佇んで見惚れていた
こんなきれいな桜を お母さん
あなたにも見せてあげ
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