コールド・スリープ/千波 一也
 

やわらかな睫毛は
煌めきながら砕けたから
ぼくの腕には、もう
何も残らない

その
残らない感触が
時間、なのだろう



いきているのか
いないのか

真っすぐ過ぎて
やわらかい硬度の向こう側に
ひとを飲み込む孤独が
ある

らしい。



いつかきみは
宇宙のかなたを知りたい、と
教えてくれたね

そんなきみを
思い出すごとに
宇宙を忘れたぼくの暮らしが
鮮明になるよ



眠らずに済むのなら
夢など見ない、かもしれない

夢を見ないで済むのなら
痛みも傷もない、かもしれない

痛みも傷もないならば
幸せに迷
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