ゆらゆら/Ohatu
 
 地震が来て、
 そして、ぼくたちは、変わらなかった
 ぼくはぼくのまま、きみはきみのまま
 小さく区切られた、せかいのなかを生きる
 ぼくたちは助けあうなんてしなかった
 それより、携帯電話の小さな画面の中で、とある画像データを
 破格の値段で購入した
 ぼくたちは助けあうなんてしなかった
 それより、ののしり合い、人のせいにし合い
 そして、ぼくたちのめんどうを見てくれる大人はいなくなった
 声の大きい人たちが、何かを叫んでも
 勉強しないぼくたちのために分かりやすくせかいを壊しても
 結局のところ、地震も、ぼくたちの劣化も
 無かったことにはならない
 真新しいマンションには、きぼう、と名前が付き
 けっこうなお値段だが順調に売れているという
 いっぽん、またいっぽんと増えていく高さ
 ぼくたちは、埋もれてしまいそうだ
 埋もれて、そして、無くなってしまいそうなのだ
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