息をとめて/渡邉建志
トンネルに入ると僕と弟は息をとめた。
車窓越しに流れていくオレンジ色のランプをながめていた。
出口はまだ見えない。
出口が遠くに見えはじめた。僕と弟は苦しくなりはじめ、
父はアクセルを踏み込む。流れていくオレンジ色のランプが
はやくなる。
苦しくて苦しくて、ついに口を開きそうになったそのとき、
車は出口を抜けた。光がまわりに降り注いだ。
ぷはあ。
僕らは笑った。
トンネルに勝ったのだ。
十年後、僕は恋の行われた場所を去ろうとしていた。
対象はもとより去った。十分後去る場所で僕は、
ただただ 立っていた。
胸ば
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)