黄昏は逃避行/アオゾラ誤爆
湯気の立ちそうな/
あなたの/
血色のいい/
頬に触れた。
声とも吐息ともつかないふうに
「あ」
漏らしたあなたはわたしをみて、
泣きそうな顔になった。
そこそこに使い古した安価な国産車は、
とぽとぽと頼りなげにガードレールの横につけると
礼儀の正しい子どもみたいに丁寧に停止した。
「だめ」
言葉に意味はのらなくても間がもたないので
しかたなく発音するほかにない。
どこか混乱ぎみの
わたしのくちびるは
ちいさく震えながら
すっかり硬くなってしまったあなたの視線から
もう逃れられないことをさとった。
(しまった。)
しろく/
にごる/
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)