なのりそ/そらの珊瑚
 
名だけは、と
思われたのかもしれませんね

私が五つの時でした
お嬢様がお生まれになったのは
天使という形容がぴったりの
あとにも先にも
あのような愛くるしさに
私は出会ったことがありません
それから十八年
私はお嬢様の身の周りのお世話を
させていただきながら
この浜を庭として
共に大きくなったのでした

幼少期から
たいそうお可愛らしかったお嬢様は
年頃になるころは
袖を通した衣からも
透けてみえるような
美しさだと
近辺の方々から
袖衣姫(そとおりひめ)と
噂されていました

伯爵家といえども
内情は火の車
あとは
お嬢様の縁組で
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