うるう人/木屋 亞万
れたまま
四年に一度しか来ないけれど
必要だから顔は出さないわけにはいかない
その時にはもううるう人以外の人間関係が
すっかりできあがってしまっているのだ
彼は門を閉ざして
門の中で小さな王になった
独りぼっちのうるう人は
小さな独裁者になるしかない
うるう年に現れる
孤独なうるう人の存在を知る者は
どれくらいいるだろう
誰もその役目を気付かぬままかもしれない
今回も二月二十九日は
他の日から少し浮き立って過ぎていく
狂っているのはうるう人ではなく暦の方だ
うるう人はその狂いを背負い整える
小さなちいさな王様なのだ
神様がいつもそのことを遠くで見ていてくれたなら
すこしは救いになるのだろうか
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