pendius/mizunomadoka
風を防いでくれた。
彼女はしばらく呼吸を整えてから、
「ここで待ってて」と言い残して校舎沿いに走っていった。
彼女の影は夜と嵐であっという間に見えなくなった。
アーネット。
廊下の向こうでガラスの割れたような音がした。
戻ろうとすると、ペンジアスが僕の腕をつかんだ。
「あの人は嘘吐きなんかじゃない。僕らはあの人の思いやりを
確実に仕舞わなくちゃならない。だから戻っては駄目だ」
意味が分からず梯子から空を見上げると、
小さな白い石が暗黒に飲み込まれてゆくのが見えた。
僕は梯子から飛び降りた。
風が僕を暗黒に運び、僕は白い石に指先で触れた。
触れるとそれはアーネットになった。
僕は彼女のからだを抱きかかえて、暗黒に落ちていった。
窓の外に彼女が立っている。
「びしょ濡れじゃないか。はやく入りなよ」
「投げる石を探していたのよ」
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