バリにて、カメラマンK氏は/石川敬大
 
ついに
  決着をみること叶わずに
  見届けるものがだれなのか与り知らぬところで息をひきとるのだ
  だれもがそうなのだとアッケラカンと話してくれたのだ


       *


  三年後
  かれの記憶の地図にある
  チャイ屋にラムクマールを訪ねるが
  店のどこにも姿はなく
  生死と
  その後の行方
  店主もボーイも
  だれも杳としてわからないと口を閉ざし首を横にふるばかりで


  残照のなか
  茫洋としてカメラマンK氏は
  テーブルに置かれた商売道具に寄り添ったティーカップの
  あまいチャイを一気にのみほしたのだ





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