winter loser/木屋 亞万
 
れているのは
僕の頭なのだけれど

暗幕が破れたように
夜空の月から煌々と明かりが漏れている
緊張と情熱が冷めていく
手足を凍てつかせる夜の寒気は
僕の周りから幻想を奪う

終りが近いということを

もう終わったんだということを
絶え間なく僕に意識させる
けれど
頭はぼんやり左右に揺れて
僕を包囲する現実を
体内に取り込めないままでいる

どちらに転んだとしても
終わりは来る

がんばってもがんばらなくても
期限は訪れてしまう

冬は予告通りやってきて
僕のイメージする寒さの甘さをあざ笑うように
身体の芯まで凍えさせて北へと帰って行くのだ

家に帰って
ぬるいシャワーを浴びる

とおい昔
僕に降り注いだ陽射しのような
体温より低温のシャワー

そのぬるま湯でさえ
熱湯のように感じてしまう
凍えきった今の僕の手は
じんじんとぬるま湯の熱を感じて
指先が目の代わりに泣いているような
そんな空しい気分になって
シャワーを止めた後も
わずかに温まった浴室で
髪からしたたる雫を見ていた

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