winter loser/木屋 亞万
れているのは
僕の頭なのだけれど
暗幕が破れたように
夜空の月から煌々と明かりが漏れている
緊張と情熱が冷めていく
手足を凍てつかせる夜の寒気は
僕の周りから幻想を奪う
終りが近いということを
否
もう終わったんだということを
絶え間なく僕に意識させる
けれど
頭はぼんやり左右に揺れて
僕を包囲する現実を
体内に取り込めないままでいる
どちらに転んだとしても
終わりは来る
がんばってもがんばらなくても
期限は訪れてしまう
冬は予告通りやってきて
僕のイメージする寒さの甘さをあざ笑うように
身体の芯まで凍えさせて北へと帰って行くのだ
家に帰って
ぬるいシャワーを浴びる
とおい昔
僕に降り注いだ陽射しのような
体温より低温のシャワー
そのぬるま湯でさえ
熱湯のように感じてしまう
凍えきった今の僕の手は
じんじんとぬるま湯の熱を感じて
指先が目の代わりに泣いているような
そんな空しい気分になって
シャワーを止めた後も
わずかに温まった浴室で
髪からしたたる雫を見ていた
戻る 編 削 Point(5)