貨物列車/千波 一也
ら
きょうも
誰かが
遅れを気にしたり
優越したりして
背中の翼を
失って
いく
間に合うだろうか、と
問われたならば
どう答えても
結果は同じ
問うた本人が
私でないのなら
いかなる信念で答えても
いかなる根拠で答えても
いかなる情愛で答えても
間に合うものは
間に合うのだし
間に合わないものは
間に合わないのだと思う
轟音の
余韻の中を
貨物列車の最後尾が
木立の向こうに
透過していく、
いま
私に
残していけるのは
万人に向かない
道しるべ
正解だとか
過ちだとかを
促すためではなく、
ここにいたことを
ここで案じたことを告げるための
道しるべ
まだ知らない
駅の名は幾らでもある
知る駅のほうが圧倒的に
すくない
それは
なんと幸福なことだろう
まだ
出会わない
温もりや優しさが
先で待つかも知れないならば
なんと幸福なことだろう
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