貨物列車/千波 一也
轟音に
おびえるばかりの私には
列車そのものの
揺れになど
考えの
およぶ筈もなく
可憐な花、
それも一輪の花、
そんな風景ばかりに
こころを砕いて
いた
眺める窓もない箱の外には
ときどき寂しい野原が過ぎて
箱の中身の室内と
調和する、
ときどき
鍵の機能が
金属に似合うわけを
私はそうして
遠巻きに嗅ぐ、
ときどき
掌の中になど
時刻表は、ない
それはもう少し疎遠で
さりげない近しさで
背中あたりに
あると思う
たぶん
時刻表には
形がないのに
形にこだわる愚かさが
気配だけを、ただ
羅列したから
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