がりがり/Ohatu
 
 がりがりに痩せたはかない猫が、その鋭い目で、僕を狙っている。
 僕は、食べられたくて食べられたくて、その指を出した。
 そんなにはおいしくないさ、だけど、ほら
 猫は、指をかじったが、もう、くわえるほどの力しかない。
 ミルクなら飲めるかも知れない、だけど今は我慢、もうすぐ死ねる。
 抱いてやろうかと思ったが、そんなことに意味があるのか、漠然と。
 猫はよろよろと、どこかに向って、ああ、後ろ脚は変に曲がって。
 僕は、そこに残って、絶対に来ない終わりを待つ。遺言だらけの本棚が、
 さかさまに点にのぼり、雲を作っている。
 猫は強い、人はその半分も、生きてなんかいないのさ。
 ああ、もう、陽が落ちる。結局、変わらなかった、今も、墜落する飛行船のなか。
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