幸福/nonya
 

たとえば僕が
宇宙人にさらわれたとして
僕の不在に
気がつかない人は多いだろうが
僕の不在を
嘆く人は片手で充分数えられる

別に怨みごとを言うつもりはない
そんなものだといつも思っている

たとえば涙を
流してくれるのが君だとして
君は1日に1回
僕を子供のようにたしなめるし
僕は1日に3回
君に上目遣いで許しを請う

君は毎朝
僕のスーツのポケットに
アイロンのきいたハンカチを入れてくれるし
僕はたまに
思い出したようにデパ地下で
話題のスイーツを買って帰る
時にはふたりで
飼い猫のちょっとした仕草に目を細めて
時にはふたりで
レンタルの
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