耳鼻科で泣く/木原東子
った
友人たちと遠出する予定の日
まずは全員で耳鼻科まで行った
医師は椅子をしっかり握るようにと言った
「少し痛いですから動かないで」
少しの切開だったはずだが
脳天に響き、目の前が真っ白になった
呻いた
待合室にほうほうのの体でもどる
「いやあねえ、子どもみたい、泣いたの」
「泣いてないんかない、痛かったけど」
「涙がこぼれてるわよ」
自分でも呆れて拭いた
我が子らを
痛い目に合わせたことども
次々に迫いかけてきた
折檻や虐待ではない
それでも泣かすはめになった
それらが一気に襲って来た
最初の信号でこらえきれずに
泣いていた、町中で
何、この泣きは
無力な者の哀れさ
比較的
些細な哀れさだと知っていても
あとでいだけば
また笑うと知っていても
戻る 編 削 Point(17)