s字台ニュータウン/アラガイs
この辺りまで丘を登りきる
新しく切り開いた道は両脇から砂埃が舞い上がり、僕の口を塞ぐ
上から見下ろしても更地の勾配だけが霞んでいる
いつのまにか、舗装された道路まで引き返していた
そして煙る灰色の建物の中に佇んでいた
みすぼらしい机と牛革の黒いソファー
入り口には青い大きなポリ容器が置いてあり、直角に壁を隔てた細い廊下を曲がると、地下室に辿り着くはずだ
雑多な笑い声が、餌を漁る烏の羽先のように耳先に震えて、響き合う壁までが胸をついてくる
(腹の裏側から伺うような声音)いやな予感がした
あの何度も夢に出てくる、まるで見覚えのある光景だ
僕はそっと気づかれないよう
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