午前八時三十五分恋に落ちて/そらの珊瑚
 
ちなので
道を踏み外して
あなたと共に生きていくことなど
これからも到底できないでしょうが
窓硝子が
びりりと震え
透明な空気が電気を帯びて共鳴した
あの奇跡のような
瞬間を
今でも 密やかに
思い出すことで
幸せな気持ちになるのです

紛れもなく
それは
恋でありました

春になったら
高架線沿いに
ソメイヨシノが咲くことでしょう
散り始めたら
その花びらを
髪にさして逢いにゆきます
午前八時三十五分
あなたに
それを贈るために

また今日も
決まった道を走ります
ささやかな恋ではあるけれど
それは私の背中をそっと押してくれる
大切なものとなりました



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