布讃歌/そらの珊瑚
 
いているのを
誰も知ってはいないでしょう

泣かなくてもいいのです
涙は拭いてあげられないけれど
こぼしてしまった牛乳は
私が拭いてあげますから
誰にも失敗はあるものです
子供の失敗は失敗と呼びません
大人だって失敗はするものです
人が生きていくということは
周囲を汚し
失敗を重ねていくということです
ひとつも臆することはないのです

昔でしたら
土壁のなかで
補強材にでも
してもらえたそうですが
今、そのような家は
もうないそうですね
残念といえば残念です

そろそろ
命が終わりに近づいてきたようです

花火のように美しくはないですが
いい人生だったと思います
来世でも
一枚の布になりたいと願います

誰かの役に立ち続け
最期はぼろに成り果てて
そんな人生があっても
いいではないですか
そんな物語が
あってもいいではないですか

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